
2018.07.20

アスリートだって必要な薬は使える!

こんにちは。
ボディケア事業部の専属トレーナー岡田英之です。
前回はスポーツの世界で「してはいけないこと」のルールである「禁止表国際基準」について書かせて頂きました。
スポーツの世界で使用が禁止されているものとは?
禁止表には禁止されている物質や方法が記載されていて、中には風邪薬に含まれるような身近な成分もありました。
では、今回は「してはいけないこと」ではなく「やれること」について紹介します。何でもかんでも禁止されているわけではありません。アスリートだって必要な治療を受け、必要な薬を使うことが出来るのです。

これは日本語で「治療使用特例」と呼ばれるものです。
病気や怪我の治療をする際に、どうしても禁止物質や禁止方法を使わなければならない時に申請をし、認められればその禁止物質や禁止方法を治療目的で使用することができる「特例」です。
世界ドーピング防止規定(WAD CODE)にはTUEについて次のように書かれています。
4.4.1禁止物質若しくはその代謝物、マーカーの存在及び/又は禁止物質若しくは禁止方法の使用、使用の企て、保有若しくは投与、投与の企ては、「治療使用特例に関する国際基準」に基づき付与されたTUEの条項に適合する場合には、アンチ・ドーピング規則違反とは判断されないものとする
要するに、TUE申請をやっておかないと禁止物質や禁止方法を使用した際に違反となりますよ!ということです。
※詳細サイトを参照 TUE関連書式ダウンロードサイト

治療を行うからと言って何でもかんでも申請すれば良いというわけではありません。ちゃんと条件があります。
下記4つの条件をすべて満たすことが必要です。
①使用しないと健康に重大な影響が出る
②他に代えられる治療がない
③健康を取り戻す以上に競技力を向上させない
④ドーピングの副作用に対する治療ではない
例えば、風邪薬の様に代わりがいくらでもきくような薬に関しては、TUEを取得する条件としては認められません。禁止物質の入っていない風邪薬を選んで使用すればよいだけの話です。
要は「それしか治療法がない」という場合に適切な治療を受けられるアスリートの権利がこのTUEです。禁止物質・禁止方法に該当するからという理由で治療をあきらめたり、中断する必要はないのです。
・・・ただ、申請をしたからと言ってすべてが認められるわけではありません。そして、TUE付与には期間が設定されます。したがって、TUEも更新していかなければなりません。
必ずTUE申請が必要なアスリートは次に該当する選手です。
①国際競技連盟指定のRTPA
②日本アンチ・ドーピング機構(JADA)指定のRTPA
③国内のアスリート(RTPAでない)で、国際競技連盟主催の競技会に参加
④国内のアスリート(RTPAでない)で、TUE事前申請対象の競技会に参加する場合
⑤国内のアスリート(RTPAでない)で、TUE事前申請対象の競技会以外に参加し、JADAからTUE申請が必要な旨の連絡があった場合
ここで「RTPA」という単語が出てきます。
これは「Registered Testing Pool Athlete:検査対象者登録リストに含まれるアスリート」の略語です。トップアスリートになると、いつでもどこでも検査に応じる責務があるため、居場所情報の提出と更新をしなければなりません。そのため、RTPAに指定される選手はいつ・どこにいるかという情報を「ADAMS(アダムス)」というインターネット上のシステムを通して提出することが求められています。
いわばトップアスリートである証の様なものです。
RTPAに指定されているアスリートはもちろんのこと、国際大会に出場するレベルのアスリートはRTPAの指定に関係なく禁止物質・禁止方法を使用する場合にはTUEが必要となります。
また、国内でTUE事前申請対象の競技会については下記のサイトから確認することが出来ます。
2018 国内のTUE事前申請が必要な競技大会一覧
例えば、競技中に突然倒れたり、思わぬ形で怪我をして救急搬送されるような場合はどうすればよいのでしょうか?
時に命に関わるような状態や健康に重大な影響が出る可能性がある時に、「ドーピング検査でひっかかるから」なんて理由を言っている場合ではない状況もあります。
そんな時は「遡及的TUE」といって、治療後に速やかにTUE申請をすることが可能です。
必要な申請を怠るとアンチ・ドーピング規則違反として制裁を受ける可能性があります。
こんなことも実際に起こっています。
「病気の治療で禁止物質に該当する薬を使っていたが、両親の元を離れ自分でTUE申請をするようになった際に、書類不備による再提出をしなかったことでTUE付与期間が過ぎ、競技会で陽性が出て制裁を科された」
病気の治療のために必要な薬を使っており、ちゃんと申請をしていれば継続できていたにも関わらず、手続きを怠ったことで起きた事例です。
ドーピング検査にひっかかるからという理由で治療をあきらめる必要はありません。アスリートにも適切な治療を受けられる権利があり「TUE」という申請をし認められれば治療を受けることが出来ます。
これも、平等に競技を行うためのアスリートの権利、「やれること」です。
「してはいけないこと」のルールを理解し、「やれること」を知ることで、アスリートはより競技に集中していくことができます。
アスリート自身だけではなく、周りのトレーナーや監督・コーチ・家族など、サポートする側の方々にもこのようなルールを知って頂き、必要な時に選手たちへアドバイス頂けたらと思います。
ボディケア事業部の専属トレーナー岡田英之です。
前回はスポーツの世界で「してはいけないこと」のルールである「禁止表国際基準」について書かせて頂きました。
スポーツの世界で使用が禁止されているものとは?
禁止表には禁止されている物質や方法が記載されていて、中には風邪薬に含まれるような身近な成分もありました。
では、今回は「してはいけないこと」ではなく「やれること」について紹介します。何でもかんでも禁止されているわけではありません。アスリートだって必要な治療を受け、必要な薬を使うことが出来るのです。
TUE(Therapeutic Use Exemptions)

これは日本語で「治療使用特例」と呼ばれるものです。
病気や怪我の治療をする際に、どうしても禁止物質や禁止方法を使わなければならない時に申請をし、認められればその禁止物質や禁止方法を治療目的で使用することができる「特例」です。
世界ドーピング防止規定(WAD CODE)にはTUEについて次のように書かれています。
4.4.1禁止物質若しくはその代謝物、マーカーの存在及び/又は禁止物質若しくは禁止方法の使用、使用の企て、保有若しくは投与、投与の企ては、「治療使用特例に関する国際基準」に基づき付与されたTUEの条項に適合する場合には、アンチ・ドーピング規則違反とは判断されないものとする
要するに、TUE申請をやっておかないと禁止物質や禁止方法を使用した際に違反となりますよ!ということです。
※詳細サイトを参照 TUE関連書式ダウンロードサイト
TUEを取得するための条件

治療を行うからと言って何でもかんでも申請すれば良いというわけではありません。ちゃんと条件があります。
下記4つの条件をすべて満たすことが必要です。
①使用しないと健康に重大な影響が出る
②他に代えられる治療がない
③健康を取り戻す以上に競技力を向上させない
④ドーピングの副作用に対する治療ではない
例えば、風邪薬の様に代わりがいくらでもきくような薬に関しては、TUEを取得する条件としては認められません。禁止物質の入っていない風邪薬を選んで使用すればよいだけの話です。
要は「それしか治療法がない」という場合に適切な治療を受けられるアスリートの権利がこのTUEです。禁止物質・禁止方法に該当するからという理由で治療をあきらめたり、中断する必要はないのです。
・・・ただ、申請をしたからと言ってすべてが認められるわけではありません。そして、TUE付与には期間が設定されます。したがって、TUEも更新していかなければなりません。
TUEが必要なアスリートとは?
必ずTUE申請が必要なアスリートは次に該当する選手です。
①国際競技連盟指定のRTPA
②日本アンチ・ドーピング機構(JADA)指定のRTPA
③国内のアスリート(RTPAでない)で、国際競技連盟主催の競技会に参加
④国内のアスリート(RTPAでない)で、TUE事前申請対象の競技会に参加する場合
⑤国内のアスリート(RTPAでない)で、TUE事前申請対象の競技会以外に参加し、JADAからTUE申請が必要な旨の連絡があった場合
ここで「RTPA」という単語が出てきます。
これは「Registered Testing Pool Athlete:検査対象者登録リストに含まれるアスリート」の略語です。トップアスリートになると、いつでもどこでも検査に応じる責務があるため、居場所情報の提出と更新をしなければなりません。そのため、RTPAに指定される選手はいつ・どこにいるかという情報を「ADAMS(アダムス)」というインターネット上のシステムを通して提出することが求められています。
いわばトップアスリートである証の様なものです。
RTPAに指定されているアスリートはもちろんのこと、国際大会に出場するレベルのアスリートはRTPAの指定に関係なく禁止物質・禁止方法を使用する場合にはTUEが必要となります。
また、国内でTUE事前申請対象の競技会については下記のサイトから確認することが出来ます。
2018 国内のTUE事前申請が必要な競技大会一覧
緊急の場合は??
例えば、競技中に突然倒れたり、思わぬ形で怪我をして救急搬送されるような場合はどうすればよいのでしょうか?
時に命に関わるような状態や健康に重大な影響が出る可能性がある時に、「ドーピング検査でひっかかるから」なんて理由を言っている場合ではない状況もあります。
そんな時は「遡及的TUE」といって、治療後に速やかにTUE申請をすることが可能です。
申請を怠ると・・・・
必要な申請を怠るとアンチ・ドーピング規則違反として制裁を受ける可能性があります。
こんなことも実際に起こっています。
「病気の治療で禁止物質に該当する薬を使っていたが、両親の元を離れ自分でTUE申請をするようになった際に、書類不備による再提出をしなかったことでTUE付与期間が過ぎ、競技会で陽性が出て制裁を科された」
病気の治療のために必要な薬を使っており、ちゃんと申請をしていれば継続できていたにも関わらず、手続きを怠ったことで起きた事例です。
ドーピング検査にひっかかるからという理由で治療をあきらめる必要はありません。アスリートにも適切な治療を受けられる権利があり「TUE」という申請をし認められれば治療を受けることが出来ます。
これも、平等に競技を行うためのアスリートの権利、「やれること」です。
「してはいけないこと」のルールを理解し、「やれること」を知ることで、アスリートはより競技に集中していくことができます。
アスリート自身だけではなく、周りのトレーナーや監督・コーチ・家族など、サポートする側の方々にもこのようなルールを知って頂き、必要な時に選手たちへアドバイス頂けたらと思います。