
2018.06.12

こんにちは。東京都板橋区にある運動総合施設ウィンゲートトレーニングセンターのアドバイザリースタッフ紀平です。
腰痛の記事は多くの方に読んでいただきました。
結局のところ、正しい知識を身に着けて実践することが大事というお話でした。
今回は足首の捻挫について、少し専門的に解説します。

よく「捻挫などのケガはクセになる」と言いますが、それはどういうことでしょうか?
捻挫は、実は靭帯損傷です。
身体の表面からは見えなくても、捻挫すると靭帯が断裂します。
その程度によって軽症か重症が決まります。
捻挫をすると
ケガをした靭帯から血が出て
傷をふさぐカサブタになることで
徐々に靭帯が治っていくのです。
この過程は、皮膚にできた傷が治っていくのと同じです。
さて。皆さん、手や肘や膝を見て
カサブタの跡を探してみてください。
小学生の頃に活動的だった方や、少し大きなケガをした方は
どこかにカサブタの跡を見つけられるかもしれません。
そのカサブタがあった部分が
周りの皮膚とは違って、少し光っているのがわかりますか?
靭帯損傷である捻挫も
自然と治っていくと、カサブタの跡のようなものを靭帯の中に作ります。
専門的な言葉でこれは「瘢痕(はんこん)」と呼ばれます。
関節が悪い方向に動かないように止めている靭帯の中に
こんな余分なものがあったら、どうでしょう?
もうお分かりのように、これは靭帯の強さを弱くします。
結果的に
一度捻挫すると弱い靭帯ができる、ということです。
そうして、捻挫は繰り返されます。
クセにしないためには、瘢痕(はんこん)を少なくすることです。
瘢痕とは、カサブタの跡のようなものでした。
これを減らすためには
3段階で対応することです。
どれも当たり前のことですが、これらを疎かにすると、捻挫はクセになってしまいます。
1.ケガをしたら

まずは無理しないことです。
皮膚表面に傷ができて血が出ていることのことを考えてください。
すぐに水道水で洗い流して清潔な布(滅菌ガーゼ等)で押さえますよね?
出血が身体の中で起こっている場合にも
同様の対応をしてください。
運動を中止し、アイシングをします。
2.アイシング後
専門家に見てもらいましょう。
足首の捻挫の最適な治療法は、重症度に応じて異なります。
一般的な治療法としては
足首を捻挫しないように固定しつつ
痛みが強い場合には松葉杖の使用を考慮するというところでしょう。
しかし、軽度の捻挫では
過度な固定が治るまでの期間を引き伸ばすことがわかっています。
また、同様に松葉杖の使用も
足の感覚に悪影響を与えて
スポーツ復帰を遅くしたり、捻挫を繰り返す原因となったりします。
専門家によって正しく重症度が判定されないと、適切な対応ができません。
とくにスポーツに早く復帰したい方は
適切に捻挫を見てくれる専門家に紹介すべきです。
専門家であれば、レントゲン撮影だけでなく
足首を捻挫する力を加えながらのレントゲン撮影や
レントゲンは使わずに、手で足首の捻挫を誘発するなどして
その重症度を診断または判断します。
これらの検査が行われなければ
早期スポーツ復帰を望むスポーツ選手の足首を専門的に見ているとはいえないでしょう。
また、専門家に見せるのは、腫れが出てくる前としてください。
具体的には、ケガをしてから2日以内としてください。
腫れが出てからでは、正しく判断できません。
3.痛みがおさまってきたら
捻挫の痛みは、重症度にもよりますが、1週間もすればおさまってきます。
しかし、皮膚表面の傷を思い返してください。
まだカサブタがある状態です。
カサブタがある状態で無理に運動したら
カサブタが剥がれて、また血が出ます。
それを繰り返すと、はじめに書いたように、光沢のある弱い皮膚になります。
そこで、捻挫をクセにしないためには
痛みがおさまってきたら、徐々に運動を開始します。
運動といっても、競技への復帰ではありません。
はじめは、足首を捻挫しないように大きく動かします。
次に、スクワットなどの移動を伴わない運動をします。
さらに、ランジなど、移動を伴う運動へと進めます。
また、これは安全性の観点から専門家の監視下で実施してほしいのですが
ケガをした直後から、いわゆるバランストレーニングを取り入れるのも有効です。
最終的には、片脚でジャンプしながら移動できるようにします。
一般的に
捻挫をしていないほうの脚の80%以上のパフォーマンスを発揮できれば
競技に復帰しても再び捻挫することは少ないとされています。
具体的には、片脚で1本の線の左右を10秒間ジャンプし続けて
その回数をカウントしてみるとよいでしょう。
捻挫していないほうの回数と比べて、捻挫したほうの回数が80%以上であれば
そろそろ競技に復帰します。
※競技復帰の際のポイント
ただし、競技を休んでいた間、体力が低下しています。
足首の状態が良くなったからといって
すぐに全ての練習に復帰すると
疲れから捻挫の再発はもちろん、他のケガを引き起こしかねません。
可能な限り
・まずはウォーミングアップだけ
・次にウォーミングアップと基本練習だけ
・さらにウォーミングアップと基本練習と対人練習
・ウォーミングアップと基本練習と対人練習と試合形式の練習
というように段階的に競技復帰を進めるのが安全です。
足首の捻挫は非常に頻繁に発生するスポーツ傷害です。
しかし、適切に対応できることは稀で、しばしば慢性に移行します。
そのことが大事な場面で問題となることもあります。
上記のことは基本的な対応ばかりですが
これらを疎かにしなければ
捻挫の繰り返し、慢性化を防ぐことができます。
さらに、競技復帰に際しては段階的に進めることが重要です。
一見すると、時間をかけ過ぎているように思えますが
復帰を急いだ結果、途中で休みが必要になると
結局は練習できる時間が少なくなります。
それよりは、地道にコツコツとできることを続けていくほうが
実は練習時間を多く確保できるものです。
(小学生の時の夏休みの宿題を思い浮かべてください)
ケガからの復帰のためには、治療だけではなくトレーニングも必要です。
トレーニングも治療も実施できる専門家のいる場所を選ぶこと
それが最もケガを再発させない方法かもしれません。
スポーツで頻発する足首の捻挫
スポーツで頻発する足首の捻挫

こんにちは。東京都板橋区にある運動総合施設ウィンゲートトレーニングセンターのアドバイザリースタッフ紀平です。
腰痛の記事は多くの方に読んでいただきました。
腰痛を治すには○○だけすれば良い!
こんにちは。東京都板橋区ウィンゲートトレーニングセンターのアドバイザリースタッフ紀平です。 今日は日本人で最も...
結局のところ、正しい知識を身に着けて実践することが大事というお話でした。
今回は足首の捻挫について、少し専門的に解説します。
捻挫はクセになる!?

よく「捻挫などのケガはクセになる」と言いますが、それはどういうことでしょうか?
捻挫は、実は靭帯損傷です。
身体の表面からは見えなくても、捻挫すると靭帯が断裂します。
その程度によって軽症か重症が決まります。
捻挫をすると
ケガをした靭帯から血が出て
傷をふさぐカサブタになることで
徐々に靭帯が治っていくのです。
この過程は、皮膚にできた傷が治っていくのと同じです。
さて。皆さん、手や肘や膝を見て
カサブタの跡を探してみてください。
小学生の頃に活動的だった方や、少し大きなケガをした方は
どこかにカサブタの跡を見つけられるかもしれません。
そのカサブタがあった部分が
周りの皮膚とは違って、少し光っているのがわかりますか?
靭帯損傷である捻挫も
自然と治っていくと、カサブタの跡のようなものを靭帯の中に作ります。
専門的な言葉でこれは「瘢痕(はんこん)」と呼ばれます。
関節が悪い方向に動かないように止めている靭帯の中に
こんな余分なものがあったら、どうでしょう?
もうお分かりのように、これは靭帯の強さを弱くします。
結果的に
一度捻挫すると弱い靭帯ができる、ということです。
そうして、捻挫は繰り返されます。
どうすればクセにならないか?
クセにしないためには、瘢痕(はんこん)を少なくすることです。
瘢痕とは、カサブタの跡のようなものでした。
これを減らすためには
3段階で対応することです。
どれも当たり前のことですが、これらを疎かにすると、捻挫はクセになってしまいます。
1.ケガをしたら

まずは無理しないことです。
皮膚表面に傷ができて血が出ていることのことを考えてください。
すぐに水道水で洗い流して清潔な布(滅菌ガーゼ等)で押さえますよね?
出血が身体の中で起こっている場合にも
同様の対応をしてください。
運動を中止し、アイシングをします。
スポーツ現場にいると、アイシングをしつつ運動している選手や
短時間のアイシングで痛みを抑えた後に練習をしている選手もいますが
それは逆効果なので要注意です!
アイシングは痛みを抑える効果に優れているので
痛みをごまかしながら練習をした結果
患部はかえって悪化する!というリスクがあります。
2.アイシング後
専門家に見てもらいましょう。
足首の捻挫の最適な治療法は、重症度に応じて異なります。
一般的な治療法としては
足首を捻挫しないように固定しつつ
痛みが強い場合には松葉杖の使用を考慮するというところでしょう。
しかし、軽度の捻挫では
過度な固定が治るまでの期間を引き伸ばすことがわかっています。
また、同様に松葉杖の使用も
足の感覚に悪影響を与えて
スポーツ復帰を遅くしたり、捻挫を繰り返す原因となったりします。
専門家によって正しく重症度が判定されないと、適切な対応ができません。
とくにスポーツに早く復帰したい方は
適切に捻挫を見てくれる専門家に紹介すべきです。
専門家であれば、レントゲン撮影だけでなく
足首を捻挫する力を加えながらのレントゲン撮影や
レントゲンは使わずに、手で足首の捻挫を誘発するなどして
その重症度を診断または判断します。
これらの検査が行われなければ
早期スポーツ復帰を望むスポーツ選手の足首を専門的に見ているとはいえないでしょう。
また、専門家に見せるのは、腫れが出てくる前としてください。
具体的には、ケガをしてから2日以内としてください。
腫れが出てからでは、正しく判断できません。
3.痛みがおさまってきたら
捻挫の痛みは、重症度にもよりますが、1週間もすればおさまってきます。
しかし、皮膚表面の傷を思い返してください。
まだカサブタがある状態です。
カサブタがある状態で無理に運動したら
カサブタが剥がれて、また血が出ます。
それを繰り返すと、はじめに書いたように、光沢のある弱い皮膚になります。
そこで、捻挫をクセにしないためには
痛みがおさまってきたら、徐々に運動を開始します。
運動といっても、競技への復帰ではありません。
はじめは、足首を捻挫しないように大きく動かします。
次に、スクワットなどの移動を伴わない運動をします。
さらに、ランジなど、移動を伴う運動へと進めます。
また、これは安全性の観点から専門家の監視下で実施してほしいのですが
ケガをした直後から、いわゆるバランストレーニングを取り入れるのも有効です。
最終的には、片脚でジャンプしながら移動できるようにします。
一般的に
捻挫をしていないほうの脚の80%以上のパフォーマンスを発揮できれば
競技に復帰しても再び捻挫することは少ないとされています。
具体的には、片脚で1本の線の左右を10秒間ジャンプし続けて
その回数をカウントしてみるとよいでしょう。
捻挫していないほうの回数と比べて、捻挫したほうの回数が80%以上であれば
そろそろ競技に復帰します。
※競技復帰の際のポイント
ただし、競技を休んでいた間、体力が低下しています。
足首の状態が良くなったからといって
すぐに全ての練習に復帰すると
疲れから捻挫の再発はもちろん、他のケガを引き起こしかねません。
可能な限り
・まずはウォーミングアップだけ
・次にウォーミングアップと基本練習だけ
・さらにウォーミングアップと基本練習と対人練習
・ウォーミングアップと基本練習と対人練習と試合形式の練習
というように段階的に競技復帰を進めるのが安全です。
まとめ
足首の捻挫は非常に頻繁に発生するスポーツ傷害です。
しかし、適切に対応できることは稀で、しばしば慢性に移行します。
そのことが大事な場面で問題となることもあります。
上記のことは基本的な対応ばかりですが
これらを疎かにしなければ
捻挫の繰り返し、慢性化を防ぐことができます。
さらに、競技復帰に際しては段階的に進めることが重要です。
一見すると、時間をかけ過ぎているように思えますが
復帰を急いだ結果、途中で休みが必要になると
結局は練習できる時間が少なくなります。
それよりは、地道にコツコツとできることを続けていくほうが
実は練習時間を多く確保できるものです。
(小学生の時の夏休みの宿題を思い浮かべてください)
ケガからの復帰のためには、治療だけではなくトレーニングも必要です。
トレーニングも治療も実施できる専門家のいる場所を選ぶこと
それが最もケガを再発させない方法かもしれません。