
2018.07.06

ピリピリする様な痛みはどう対処する?

こんにちは。ウィンゲートトレーニングセンター、ボディケア事業部の岡田英之です。
以前痛み止めの記事を書かせて頂きましたが、その中で「神経障害性疼痛」へのアプローチについてまだ触れていませんでした。
痛み止めとうまく付き合うために①
痛み止めとうまく付き合うために②
ピリピリする様な、痺れる様な痛みについては一般的に使われている痛み止め(いわゆるNSAIDs)は効果が薄く、別のアプローチが必要となる場合が多いです。
神経障害性疼痛では、まずは病院で診察をしてもらうことが一番です。
それを踏まえた上でご覧下さい。

以前の記事のおさらいですが、この痛みは神経が何かしらの原因で障害されることで起きる痛みです。炎症や傷は見られません。したがって、「炎症」が原因ではないこの「神経障害性疼痛」にはNSAIDsの効果が得られにくいのです。
どの様な痛みか想像がつきにくいものです。例えば、長時間の正座により足が痺れてきた時の様なジンジンする痛みだったり、針でチクチクされるような痛みだったり、ピリピリと感じる痛みとして表現されます。
神経障害性疼痛が生じる具体的な疾患としては以下のものがあります。
その名の通り、「帯状疱疹」の後に残る神経痛のことです。帯状疱疹の原因となるウイルスは神経に潜み、免疫力の低下などをきっかけに活動性が高まり、潜伏している神経に沿って痛み・発疹が現れます。
「痛痒い」という症状を訴えられる方が多く、治療は抗ウイルス薬の投与を行います。
やっかいなのが、帯状疱疹で神経が障害されると、発疹が改善した後も長期間にわたり神経痛(ピリピリした様な痛み)に悩まされることです。
腰部の脊柱管が狭くなり、神経が障害されることにより腰から足にかけて痛みが出ます。どの部分が障害されるかによって、痛みの範囲は異なります。
頸椎の変性などが原因で、神経の出口である椎間孔が狭くなることで神経を圧迫します。それにより神経が障害され、首だけではなく、肩や腕、指先にかけて痛みや痺れが出てきます。
脊椎同士のクッションとなる椎間板が変性し、椎間板の中身である髄核が外に飛び出たりすることで神経を圧迫し、障害します。腰部の椎間板ヘルニアではお尻から足にかけて痺れや痛みを訴えることが多いです。
他にも神経障害性疼痛をきたすものとしては、坐骨神経痛や三叉神経痛、繊維筋痛症、糖尿病性神経障害など様々なものがあります。

先述した通り、神経障害性疼痛は炎症が原因では無いため、NSAIDsの効果が得られにくい種類の痛みです。したがって神経痛の症状を訴える場合にロキソニンなどを使っても効果的ではありません。
では、どのようにアプローチするのでしょうか?
「痛み」となる刺激を感じたとき、その情報は神経を通じて脳へ送られ、痛みとして認識されます。痛みを伝える神経は1本で脳まで届くわけではなく、基本的には2回の乗り換えがあり、3本の神経を伝わることで脳まで信号が送られます。
痛みを脳まで伝える経路がある一方で、ヒトの体には痛みを抑制する神経の経路も存在します。それが「下降性疼痛抑制系」と呼ばれる経路です。
これは脊髄よりも上にある脳幹部から脊髄後角に下行し、痛み情報の入り口である脊髄後角で痛みの伝達を抑制する経路です。要するに、痛みを感じにくくする経路がヒトには存在するという事です。ここではセロトニン・ノルアドレナリンという化学伝達物質(神経同士で情報のやり取りをする際に放出される物質)が関わっています。
つまり、ヒトには「痛みを感じる経路」と「痛みを感じにくくする経路」の両方が備わっているのです。
・・・ということは、「痛みを感じる経路」を邪魔したり、「痛みを感じにくくする経路」の働きを強めることで痛みを抑えていくことが出来るのです。
そして、最近ではその様なアプローチが出来る薬が開発されています。
神経障害性疼痛で第一選択薬として使用がされています(※神経障害性疼痛治療ガイドラインより)。
適応疾患も「神経障害性疼痛」「線維筋痛症に伴う疼痛」という薬です。
神経が過剰に興奮していると神経同士の情報伝達を担う化学伝達物質が過剰に放出されるため、痛みを感じることになります。リリカはこの過剰な興奮を抑え、興奮性の化学伝達物質の放出を抑制することで痛みを軽減してくれる薬です。
つまり、「痛みを伝える経路」を邪魔する薬です。
また、下降性疼痛抑制系に関与していることも示唆されています。
もともとは帯状疱疹後神経痛の薬として発売されましたが、適応が広がり「神経障害性疼痛」という幅広い痛みに対して使えるようになりました。
副作用として眠気が強く出ることがありますが、神経障害性疼痛といえばまずリリカが処方されるケースが非常に多くなっています。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬です。
この薬は抗うつ剤として有名ですが、鎮痛剤として糖尿病性神経障害や線維筋痛症、変形性関節症、慢性腰痛にも使用されます。神経障害性疼痛治療ガイドラインでは、第二選択薬として位置づけられています。
セロトニンとノルアドレナリンは下降性疼痛抑制系を賦活化させることで痛みを抑制する働きを持っています。セロトニンやノルアドレナリンといった化学伝達物質は神経終末から放出された後、一部再取り込みがされ再利用されます。SNRIはこの再取り込みを阻害することで、神経と神経の間のセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高め、それぞれの働きを強めることが出来る薬です。
つまり、「痛みを感じにくくする経路」を強めることで鎮痛効果を発揮します。
上記2つ以外にも、
といった薬が使われることがあります。
神経障害性疼痛にはNSAIDsで代表的なロキソニンなどの飲み薬や、モーラステープの様な貼り薬を使っても効果が得られにくいため、別のアプローチをすることが望まれます。
ピリピリ・ジンジン・チクチクといった神経障害性疼痛の症状と思われるものが出ている方は、自己判断でNSAIDsを使うよりもまず病院へ行ってしっかり診断をしてもらうことをお勧めします。
「痛み」も種類によってアプローチが異なるのです。
以前痛み止めの記事を書かせて頂きましたが、その中で「神経障害性疼痛」へのアプローチについてまだ触れていませんでした。
痛み止めとうまく付き合うために①
痛み止めとうまく付き合うために②
ピリピリする様な、痺れる様な痛みについては一般的に使われている痛み止め(いわゆるNSAIDs)は効果が薄く、別のアプローチが必要となる場合が多いです。
神経障害性疼痛では、まずは病院で診察をしてもらうことが一番です。
それを踏まえた上でご覧下さい。
神経障害性疼痛

以前の記事のおさらいですが、この痛みは神経が何かしらの原因で障害されることで起きる痛みです。炎症や傷は見られません。したがって、「炎症」が原因ではないこの「神経障害性疼痛」にはNSAIDsの効果が得られにくいのです。
どの様な痛みか想像がつきにくいものです。例えば、長時間の正座により足が痺れてきた時の様なジンジンする痛みだったり、針でチクチクされるような痛みだったり、ピリピリと感じる痛みとして表現されます。
神経障害性疼痛が生じる具体的な疾患としては以下のものがあります。
①帯状疱疹後神経痛
その名の通り、「帯状疱疹」の後に残る神経痛のことです。帯状疱疹の原因となるウイルスは神経に潜み、免疫力の低下などをきっかけに活動性が高まり、潜伏している神経に沿って痛み・発疹が現れます。
「痛痒い」という症状を訴えられる方が多く、治療は抗ウイルス薬の投与を行います。
やっかいなのが、帯状疱疹で神経が障害されると、発疹が改善した後も長期間にわたり神経痛(ピリピリした様な痛み)に悩まされることです。
②腰部脊柱管狭窄症
腰部の脊柱管が狭くなり、神経が障害されることにより腰から足にかけて痛みが出ます。どの部分が障害されるかによって、痛みの範囲は異なります。
③頸椎症性神経根症
頸椎の変性などが原因で、神経の出口である椎間孔が狭くなることで神経を圧迫します。それにより神経が障害され、首だけではなく、肩や腕、指先にかけて痛みや痺れが出てきます。
④椎間板ヘルニア
脊椎同士のクッションとなる椎間板が変性し、椎間板の中身である髄核が外に飛び出たりすることで神経を圧迫し、障害します。腰部の椎間板ヘルニアではお尻から足にかけて痺れや痛みを訴えることが多いです。
他にも神経障害性疼痛をきたすものとしては、坐骨神経痛や三叉神経痛、繊維筋痛症、糖尿病性神経障害など様々なものがあります。
ピリピリした痛みを抑えるには?

先述した通り、神経障害性疼痛は炎症が原因では無いため、NSAIDsの効果が得られにくい種類の痛みです。したがって神経痛の症状を訴える場合にロキソニンなどを使っても効果的ではありません。
では、どのようにアプローチするのでしょうか?
痛みの伝わり方
「痛み」となる刺激を感じたとき、その情報は神経を通じて脳へ送られ、痛みとして認識されます。痛みを伝える神経は1本で脳まで届くわけではなく、基本的には2回の乗り換えがあり、3本の神経を伝わることで脳まで信号が送られます。
下降性疼痛抑制系
痛みを脳まで伝える経路がある一方で、ヒトの体には痛みを抑制する神経の経路も存在します。それが「下降性疼痛抑制系」と呼ばれる経路です。
これは脊髄よりも上にある脳幹部から脊髄後角に下行し、痛み情報の入り口である脊髄後角で痛みの伝達を抑制する経路です。要するに、痛みを感じにくくする経路がヒトには存在するという事です。ここではセロトニン・ノルアドレナリンという化学伝達物質(神経同士で情報のやり取りをする際に放出される物質)が関わっています。
つまり、ヒトには「痛みを感じる経路」と「痛みを感じにくくする経路」の両方が備わっているのです。
・・・ということは、「痛みを感じる経路」を邪魔したり、「痛みを感じにくくする経路」の働きを強めることで痛みを抑えていくことが出来るのです。
そして、最近ではその様なアプローチが出来る薬が開発されています。
【プレガバリン(商品名:リリカ)】
神経障害性疼痛で第一選択薬として使用がされています(※神経障害性疼痛治療ガイドラインより)。
適応疾患も「神経障害性疼痛」「線維筋痛症に伴う疼痛」という薬です。
神経が過剰に興奮していると神経同士の情報伝達を担う化学伝達物質が過剰に放出されるため、痛みを感じることになります。リリカはこの過剰な興奮を抑え、興奮性の化学伝達物質の放出を抑制することで痛みを軽減してくれる薬です。
つまり、「痛みを伝える経路」を邪魔する薬です。
また、下降性疼痛抑制系に関与していることも示唆されています。
もともとは帯状疱疹後神経痛の薬として発売されましたが、適応が広がり「神経障害性疼痛」という幅広い痛みに対して使えるようになりました。
副作用として眠気が強く出ることがありますが、神経障害性疼痛といえばまずリリカが処方されるケースが非常に多くなっています。
【デュロキセチン(商品名:サインバルタ)】
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬です。
この薬は抗うつ剤として有名ですが、鎮痛剤として糖尿病性神経障害や線維筋痛症、変形性関節症、慢性腰痛にも使用されます。神経障害性疼痛治療ガイドラインでは、第二選択薬として位置づけられています。
セロトニンとノルアドレナリンは下降性疼痛抑制系を賦活化させることで痛みを抑制する働きを持っています。セロトニンやノルアドレナリンといった化学伝達物質は神経終末から放出された後、一部再取り込みがされ再利用されます。SNRIはこの再取り込みを阻害することで、神経と神経の間のセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高め、それぞれの働きを強めることが出来る薬です。
つまり、「痛みを感じにくくする経路」を強めることで鎮痛効果を発揮します。
上記2つ以外にも、
- ▢ 三環系抗うつ薬
- ▢ ワクシニアウイルス摂取家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)
- ▢ 麻薬性鎮痛剤(トラマドール・ブプレノルフィン・モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル)
- ▢ ビタミンB12(商品名:メチコバールなど)
といった薬が使われることがあります。
神経障害性疼痛にはNSAIDsで代表的なロキソニンなどの飲み薬や、モーラステープの様な貼り薬を使っても効果が得られにくいため、別のアプローチをすることが望まれます。
ピリピリ・ジンジン・チクチクといった神経障害性疼痛の症状と思われるものが出ている方は、自己判断でNSAIDsを使うよりもまず病院へ行ってしっかり診断をしてもらうことをお勧めします。
「痛み」も種類によってアプローチが異なるのです。