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2018.06.05

ランナーが知るべきは月間走行距離ではなく移動平均だ

ランナーが知るべきは月間走行距離ではなく移動平均だ


こんにちは。東京都板橋区にある運動総合施設ウィンゲートトレーニングセンターのアドバイザリースタッフ紀平です。
今日はランナーにとって、一番重要かもしれない、移動平均についての話です。

移動平均? 何それ美味しいの?

という方は、ぜひ読んでほしい。

今日は硬派な記事であるため
優しい写真や図などは一切使わない。

しかし、諦めずに読破してほしい。

 

はじめて会ったランナー同士があいさつ代わりに

月間走行距離は何km?

と聞くのは、ランナーあるあるだ。

しかし、記録向上またはケガを防止したいランナーにとって重要なのは月間走行距離ではない。
そう言い切ってしまうのは、実は少し不安なところもある…
しかし、それでも言い切りたい!

ランナーは月間走行距離よりも移動平均に注意を払うべきだ。

しかし、移動平均という言葉に不慣れな人が多い。
そこで今日は月間走行距離よりも重要な移動平均という言葉の意味と、その運用方法について書いていく。

 

移動平均とは?


時系列データ(より一般的には時系列に限らず系列データ)を平滑化する手法である。(Wikipediaより)


である。

が、これでは意味がわからない。

ランナー向けに意訳すると

この4週間で週平均何km走ったか

ということだ。

たとえば私自身のデータを見ると直近4週間の走行距離は週ごとに

5/7からの1週間(第19週)0km
5/14からの1週間(第20週)28.1km
5/21からの1週間(第21週)13.0km
5/28からの1週間(第22週)21.3km

だ。

この場合の4週間の移動平均は

(0+28.1+13.0+21.3)/4で

15.6kmとなる。

トレイルを含めて28.1km走った週もあれば
仕事などで0kmだった週もあるが
平均すると、ここのところ週ごとに15.6km走っていると捉えられる。

では、来週の4週間の移動平均はというと
第20週から第23週の4週間の平均を求めることになる。
つまり、今週の移動平均で求めたはじめの週(第19週)を含めず
代わりに今週(第23週)をデータに採用する。

このように平均をするデータが常に移動していくのが移動平均ということだ。

移動平均の利点は
常にその時々の実力がわかるという点にある。

ランナーにとってたとえば雨、飲み会、家庭の事情、体調不良、ケガなどは宿敵だ。
それらを含めて月間(または週間)走行距離が決まるが
時に言い訳に使ってしまうことがある。

「雨が降っていたから6月は月間走行距離が少なかった」

「飲み会が多くて月間走行距離が少なかった」

という具合だ。

これらの真意は

「(本当なら自分にはもっと走れる実力があるのに、意に反して)月間走行距離が少なかった」

ということに他ならない。

走れるはず、と思うのは自由だ。
しかし実際には、走っていない。
諸事情も含めたものが現在の実力なのだ。
移動平均は、そういった言い訳を抜きに、常に現時点での実力を表してくれる。

 

主観的強度は130%まで


まずは自分の移動平均を求めてみよう。

しかし、これだけではデータを十分に活用できない。
次に求めてほしいのが、主観的強度だ。

これは

(今週の走行距離/4週移動平均)%

で求めることができる。

今週の私の走行距離は、まだ0km…いかん。
これでは計算できないので、仮に13kmとする。
今週の4週移動平均が15.6kmなので

13/15.6=83.3%

自分の実力の83.3%の走行距離と捉えると、これは休みに近い。

一方、平日に走った上で休日にも長めに走って25kmとしよう。

25/15.6=160.3%

となる。

実力の160%の走行距離は、なかなかの高強度と理解できるだろう。

もし感覚的に理解できない場合は、食事量に置き換えてもらいたい。

定食のご飯をおかわりして半ライスを追加しよう。
満足感よりも満腹さと罪悪感が生じるかもしれない。

ラーメンの麺の量は、大盛りで1.5玉のところが多い。
なかなかお腹いっぱいになる。
常に大盛りを食べ続けたら、身体を壊すかもしれない。

しかし、少しずつ食べる量を増やしていけば
いずれはご飯2杯、ラーメン2杯も夢ではない。
(いや、夢であってほしいし、目指したくない)

ランニングも同じだ。
やり過ぎる手前で止めればゆるやかに成長するし
やり過ぎてしまえばケガや体調不良などのトラブルが起こる。

そこで
主観的強度を130%以下に定めて練習をする。

その日の体調の良し悪しや気分ではなく
あらかじめ走る距離を決めるのだ。

この手法は、実はランニングに限ったことではない。
ラグビーやバスケットボールでは
身体にGPSや加速度計を付けて、運動強度を算出し
4週の平均から今週の運動量を決めているチームがある。

それらのチームでは
ケガの発生率が著しく低下しており
練習の参加率が向上している。

つまり、継続的に練習ができるため
さらなるパフォーマンス向上が期待できる。

この時の指標も130%である。
これは、実は海外の研究論文でも認められている。

 

フルマラソン出場のためには3ヶ月の移動平均も出そう


このように4週の移動平均を算出すると
多くのトラブルが未然に回避できる。

ただし、これは日ごろのトレーニングのためだ。
フルマラソンなど長時間の運動のためには
3ヶ月(12週から13週)の移動平均も出すと良い。

この時の指標は180%以下とする。

私自身、以前から移動平均を付けているが
13週移動平均と比べた当該週の強度が180%を超えると
必ず何かしらの望まないトラブルが発生する。

それは、風邪であったり、体調不良であったり、帯状疱疹であったり、ケガであったり、意欲低下であったりだ。

いずれにしても、元気な身体であれば問題ないところ
常にランニングを続けることで身体が疲労して回復していない状態にあるので
様々なトラブルが発生しているのだ。

風邪や体調不良や意欲低下は
寒かった、体調管理ができていなかった、なんとなく、発生しているのではない。
偶然ではなく必然的に発生している。

反証として
主観的強度を守っている期間に、大きなトラブルは発生していない。

 

ご利用は計画的に


月間走行距離に追われるばかりに
つい月末に走り貯めして、月初にやる気がなくなる方がいる。

そんな気分任せのランニングでは強くなることはできない。

限りある自身の身体というリソースを有効に活用するには
計画的なランニングを実施すべきだ。

シューズやインソールにこだわるのも良い。

筋力トレーニングに励むのも良い。

インターバルトレーニングに勤しむのも良い。

疲労回復のためボディケアに通うのも良い。

しかし、それだけでは不十分だ。
計画的なランニングこそ、ケガを防いでパフォーマンスを向上させる方法だ。

ぜひ、他の数多の方法に加えて、計画的にランニングを実施していただきたい。