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2018.08.09

今からでも間に合う高山病の予防

こんにちは。
東京都板橋区ウィンゲートトレーニングセンターのランニング事業部トレーナーの齋藤大輔(さいとう だいすけ)です。

この夏、富士山を登ろうと考えている方に向けてブログを書いております。

これまでの記事はこちら↓

『富士登山チャレンジ2018』
『富士登山の準備~登山ルート編~』
『富士登山の準備~環境編~』
『富士登山の準備~道具編~』
『富士登山の準備~トレーニング編~』

今回は、富士山や標高の高い山に登ると発症しやすい「高山病」について記事にしました。

私も過去4回富士山に登り、4回高山病になっております…。

そうなんです、私は高山病に弱い体質なんです。
(高山病は人によって、なりやすい、なりづらい体質があります。)

ただ、3年ほど前からある「予防」をすることによって、高山病を発症しても症状が軽くなりました

過去の富士登山
1回目(吉田ルート):山小屋に泊まったこともあり、寝て起きたら頭痛を発症…。(あるあるで、睡眠により呼吸が浅くなることで高山病を発症しやすくなります。)
2回目(御殿場ルート):下山時に高山病発症。酷い頭痛により、下山後に食べようとしていたかき氷が食べられぜず…悲。
3回目(御殿場ルート):下山時に高山病発症。予防をしていたこともあり、軽度の頭痛のみで、下山後に念願のかき氷を食す!
4回目(御殿場ルート):下山時に高山病発症。2年連続の予防で、昨年よりも軽度の頭痛のみで、下山後にはカレーうどんを食す!!



毎回、なぜか下山後に頭痛になるのですが、ある「予防」をしていたことで、下山後の食事が気持ち良く食べられるようになりました(笑)。
さて、今年は何が食べられるか…。ワクワク。

ということで、前置きが長くなりましたが、今からでも間に合う高山病にならないための予防について解説していきます。

 




 

高山病とは




まず、高山病とは

低酸素状態に置かれたときに発生する症候群

のことを言います。

 
高山では空気が地上と比べて薄いため、概ね2400メートル以上の高山に登り酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れます。

主な症状は、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気(めまい)で他に、顔や手足のむくみ、眠気やあくびなどの睡眠障害、運動失調、低圧と消化器官の機能低下からくる放屁などが現れることもあります。

低酸素状態において数時間で発症し、一般には1日後 - 数日後には自然消失します。

しかし、重症の場合は高地脳浮腫(High-Altitude Cerebral Edema; HACE)や高地肺水腫(High-Altitude Pulmonary Edema; HAPE)を起こし、死に至ることもあります。

(Wikipedia参照)

 




 

高度の分類




ここで知っておきたいのが、標高と高山病の関係。

身体への影響という観点から見た高度の分類を下記にまとめてみました。

高度の分類:準高所
標高:1500~2440m
身体への影響:普通の人では、この高度では目立った急性高山病は現れない。また重症の高山病(肺水腫など)もほとんど起こらない。しかし呼吸循環系に障害のある人などでは、高山病が起こることもある。

高度の分類:高所
標高:2440~4270m
身体への影響:多くの旅行者が訪れる高度でもあるため、高山病の発生は目立って多い。肺水腫のような重症の高山病も起こる。高山病の程度は、日中に到達した最高高度ではなく、睡眠時の高度の影響を大きく受ける

高度の分類:高高所
標高:4270~5490m
身体への影響:ヒマラヤやアンデスなどで、登山者やトレッカーがよく訪れる高度。登山の場合は、この高度にベースキャンプを置き、何週間も滞在することも多い。この高度に行く場合、徐々に身体を順化させていかないと非常に危険である。

高度の分類:超高所
標高:5490~8848m
身体への影響:高峰に登る登山者だけが訪れる高度。高高所での順化がうまくいった人だけがこの高度に到達できるため、高山病の発生はむしろ少ない。しかしこのような人でも、急激に高度を上げたり、激しい運動をしたりすると、肺水腫や脳浮腫など重症の高山病が起こることもある。

 




 

高山病の種類




高山病は、酸素の欠乏が引き起こすさまざまな症候です。

そして、高山病には大きく分けて、急性慢性があるということ。

低地居住者に起これば急性高山病、高所定住者に起こる場合は慢性高山病と呼びます。

急性高山病(AMS:acute mountain sickness)は、重症化すると高地脳浮腫高地肺水腫となります。
頭痛はほぼ必発であり、他に下記の症状が一つ以上伴います。

・消化器症状(食欲不振、吐気、嘔吐)
・倦怠感または虚脱感
・めまいまたはもうろう感
・睡眠障害

このような症状は、標高2,500m以上に急激に発高すると25%程度の者が、上記症状が3つ以上現れます。
標高4,000mでは半数以上の者が上記症状を訴え、うち数%は重症化すると言われています。

 
高地脳浮腫(HACE:high altitude cerebral edema)は、重症急性高山病の最終段階の症状です。
精神状態の変化、運動失調を認め、1~2%の発生頻度との報告があります。

高地肺水腫(HAPE:high altitude pulmonary edema)は、安静時呼吸困難、咳、虚脱感または運動能力低下、胸部圧迫感または充満感のうち2症状を訴えます。
一肺野でのラ音または笛声音、中心性チアノーゼ、頻呼吸、頻脈のうち2兆候が出現します。

慢性高山病(CMS:chronic mountain sickness)は、標高2500m以上に居住する住民約1億人の中で、5~10%に現れています。
成人における長期的高所低酸素適応不全症候群とされ、多血症+肺高血圧症を主症状とします。

慢性高山病(あるいはMonge病)は、

・2500m以上への長期間移住者にみられる高所適応不全
・多血症(女HB19g/dL以上, 男HB21g/dL以上)
・高度な低酸素症
・中等度以上の肺高血圧症

低地へ戻れば軽快になりますが、高地へ戻ると再発します。

 
高地肺高血圧症(HAPH:high altitude pulmonary hypertension)は、2500m以上に居住する小児および成人に発症し。下記の症状がみられます。
・肺高血圧症
・平均肺動脈圧30mmHg以上
・収縮期肺動脈圧500mmHg以上
・右心室肥大
・心不全
・中等度の低酸素血症で、多血症は伴わない

余談ですが、、、
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS. obstructive sleep apnea syndrome)は、よく「いびきが止まった」などの表現をしたりしますが、これも慢性の低酸素症のひとつです。
持続的低酸素暴露状態において血小板機能が亢進し、肺塞栓症や脳梗塞、心筋梗塞を合併します。

 




 

高山病の原因




低酸素暴露が直接の原因です。
低酸素換気により血液の低酸素血漿、高二酸化炭素血症がもたらされます。
低酸素は、水・電解質代謝ホルモン調節の失調を通じて体液貯留の異常をきたし、細胞内から細胞外へ体液が移行します。
これらに関与する生理的要因として、anti-diureticvascular、atrial natriuretic peptideなどの水分バランス調節因子、angiotensin Ⅱやnitric oxideやvascular endothelial growth factor(VEGF)などが肺血管の収縮感受性の因子が関与します。

急性高山病を起こしやすい条件は、

①標高2,800m以上に1日で登る
②高地肺水腫や高地脳浮腫の既往歴がある人
③標高3500m以上で睡眠高度を1日500m以上登る人


※睡眠高度
睡眠をとる地点の標高。
高山病の予防策として、最初の夜は、標高2500~3000メートルより高い地点では睡眠をとらないようにします。
より高い高度で睡眠をとる前に、その標高で2~3晩過ごすようにします。
その後、睡眠をとる高度を一日300メートルずつ上げることができます。

 




 

高山病の予防




さて、高山病について詳しく解説してきました。

高山病の「予防」として、何をすべきか?

高山病の予防は事前準備・登山中など色々とありますが、

やはり事前準備としての「低酸素トレーニング」をお勧めします。

低酸素トレーニングをすることで、筋肉内での酸素利用の効率化が期待できます。
一定期間の継続的な低酸素暴露は、筋肉の毛細血管が発達するため、より少ない酸素を、よりうまく使おうとする変化が起きます。

酸素の薄い部屋の中で、追い込まれた状態で運動して、「これ以上酸素が吸えない」状態になったとき、筋肉の中で酸素がより効率的に利用できる能力が改善されます。

長期間の低酸素トレーニングは酸素を供給する能力を高めますが、

短期間のトレーニングでは酸素を利用する能力が変わります


すなわち、

筋肉が少ない酸素でエネルギーを生み出せるようになる


ということです。

詳しくは下記の記事をご参照ください。

ランナーのための低酸素トレーニング

いわゆる高地順化を、高地(高所)に行かずに、平地で行えます。

但し、低酸素トレーニングに対する反応の個人差は様々で、一概にも全員が当てはまるとは言えません。
標高の高い所で行う高地トレーニングも、効果を最大にするための理想的な日数や標高などに関してはまだ明らかにはなっておらず、これからの解明が期待されています。

 




 

これから富士山を登るあなたに




予防といえど、高山病になる人はなります。

大事なことは、多くの予防策を知り準備しておくことです。

 


予防薬としてダイアモックスを服用することも一つです。

ダイアモックスとは?
http://www.jsmmed.org/info/pg52.html

参照:日本登山医学会

 

ペース


登山道中ではゆっくり登高し、マイペース、もしくは集団登山の場合は一番遅い人に合わせましょう。

 

呼吸


登山中にできる高山病対策として、「呼吸」が大切です。

酸素の薄い環境でしっかりと深い呼吸を行えないと、酸素不足になります。
深い呼吸を上手にすることで、幾らか補うことができます。

深い呼吸というのは、30センチ先のろうそくを吹き消すイメージで息を3秒間はき、酸素を吸い込む「努力呼吸」のことです。

 
ゆっくりとストローから息を吐くように唇を丸めて息を吐くようにして、肺にたまっている空気をすべて吐き出すようにします。
息を吐かなければ空気を吸えないので、しっかりと息を吐きだすことを心がけましょう。

次に、ゆっくりと息を吸います。
胸が膨らむのを意識しながら、ゆっくりと吸い込むことが大切です。
空気を吸いきったらわずかに息を止め(1秒くらい)、肺に空気を押し込むような感じを意識します。

休憩中はこのような呼吸法を意識的に行い、酸素不足で脳にたまった不純物を排除していきます。

しっかりと息を吐き、空気を深く吸い込むと高山病の原因である血液中の酸素濃度(血中酸素濃度)が上がって(改善して)きます。
しかも、高山病の改善には血中酸素濃度が高い状態を10分間保持することが効果的です。
休憩中はしっかりとした呼吸法を意識的に行い、安静にするだけで高山病の対策になるのです。

 

食事


食事は量をとるよりも、回数を増やし、消化されやすい炭水化物を豊富に含む食事を少量ずつとることが有効です。

 

水分


高山病は血液中の酸素が不足し、また脳への酸素運搬が行われにくくなります。

人間の体の60~70%は水分です。
血液中にも水分がたくさん含まれています。

 
水分が不足してくるとサラサラしていた水が濃くなってドロドロとしてきます。
ドロドロと濃くなってくると血液の流れが悪くなり、血液が運搬してくれている酸素が脳へ届きにくくなります。
このような状態が水分不足によって起こり、高山病につながります。

水分を飲むことにより、すぐに血液中に吸収されます。
一所懸命、酸素缶で酸素を吸うよりも、しっかりと水分補給を行い、血液から酸素を運搬した方が効果的です。

注意したいのは、水分補給はいっぺんに行うのではなく、こまめに摂取してください。
一度に大量の水を飲んでも吸収しきれません。

 
ハイドレーションを使うことで歩きながらでも水分補給ができるため、こまめに水分補給を行うことができます。

 

睡眠


高山病は酸欠から来るもので、症状は寝不足に近い症状となります。
元々寝不足な人が富士登山に登るとさらに寝不足が悪化するような状態に陥ります。

実際に、過去の富士登山チャレンジ参加者で高山病に苦しんでいた方は、前日睡眠不足だった、、、なんてことがありました。

初心者の富士登山者に心がけてほしいのは、富士登山に向けて日程調整を行い、前日はしっかりと睡眠が取れるように仕事の調整をしましょう。
しっかりと睡眠を取り、良い体調で富士登山を望むことが最も大切な準備です

 

そして、上記に加えて低酸素トレーニングをしておけば、かなり心強いはず。

不安要素を排除しつつ、自信を付けて富士山を登ってもらいたいです!

 

ウィンゲートラン ホームページ
http://www.wingate.club/run.html