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2018.06.01

痛み止めとうまく付き合うために①

痛み止めとうまく付き合うために①


こんにちは。ウィンゲートトレーニングセンター、ボディケア事業部の岡田英之です。これまで「痛み」に対する様々な投稿をしてきました。

運動とボディケアで痛みの悪循環を断ち切る!

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腰痛を治すには〇〇だけすれば良い!

今回テーマは「痛み」の種類と「痛み止め」の使い方についてです。

 

「痛み」というものについて




タンスの角に足の指をぶつけた、階段を踏み外して足を捻った、頭が痛い、お腹が痛い、ぎっくり腰をやってしまった・・・など、痛みというものは誰しもが経験している感覚です。

その「痛み」というものも、原因によって大きく3つに分けられます。

 

①侵害受容性疼痛


人間の身体には痛みを起こす刺激を感知し、それを「痛み」として脳へ情報を伝達する受容器が存在します。(鍵と鍵穴の関係で、「痛み刺激」=鍵 「受容器」=鍵穴とすればわかりやすいでしょう。)

例えば足をぶつけた・熱いものに触ったなどの際に感じる痛みのことです。炎症や刺激による痛みで、いわゆる「怪我」をした時の痛みはこの部類に入ります。

 

②神経障害性疼痛


その名の通り、何らかの原因で神経が障害されて起きる痛みです。炎症や傷は見られず、神経が異常な興奮をすることで生じる痛みで、どこかに体をぶつけた時の様な「ズキズキ」する痛みとは異なり、「ピリピリ」するという表現をされる場合が多いです。痺れ感を伴う場合もあります。時に、触っただけの刺激でも痛みを感じる状態になることもあります。

坐骨神経痛・帯状疱疹後神経痛・糖尿病神経障害による痛みや痺れなどがこれに当たります。

 

③心因性疼痛


「神経障害性」と同様に傷や炎症は見られないもので、不安や日常生活で受ける様々なストレスが原因で起きる痛みです。痛み止めを飲んでも全く効果がないといった特徴があり、心のケアをすることが治療につながる痛みです。

 

また、痛みはその「部位」によっても分けられています。

 

①体性痛


これは体の表面が刺激されたときに感じる痛みです。物理的な刺激(機械刺激・熱刺激)や化学的な刺激が当たります。

人は42℃より高い熱を痛みとして感知します。熱湯を痛いと感じるのはそのためです。

 

②内臓痛


その名の通り、内臓が感知する痛みです。内臓には胃や小腸、肝臓、腎臓、肺など様々な臓器がありますが、肝臓や腎臓など実質部は痛みを感じません。また、胃や小腸などの管腔臓器においても切られても痛みを感じないとされています。

でも、胃痛などでお腹は痛くなりますよね・・・・?

それは、腹膜が過度に引っ張られたり、胃や小腸の平滑筋が痙攣を起こしていることで痛みを感じているのです。

 

このように、一口に「痛み」といってもその原因や部位によって様々な種類に分けられているのです。

 

「痛み止め」の使い方




痛みには様々な種類があります。

 

・・・ということは、それぞれに対して効果的なものは異なる場合があるということです。

 

NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)


ロキソニン(ロキソプロフェン)ボルタレン(ジクロフェナク)といえばイメージしやすいでしょうか?テレビCMでもおなじみの有名な薬ですね。

広く一般に使用されている薬で、飲み薬や貼り薬・塗り薬や坐薬など剤型も豊富であり、鎮痛効果が高いため実に様々な症状に用いられています。

例としては

  • ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)

  • ジクロフェナク (商品名:ボルタレンなど)

  • ケトプロフェン (商品名:モーラステープなど)

  • イブプロフェン (商品名:ブルフェンなど)

  • セレコキシブ  (商品名:セレコックス)

  • メロキシカム  (商品名:モービックなど)

  • フェルビナク  (商品名:セルタッチパップなど)


など、非常に多くの種類が使用されており、作用持続時間などそれぞれ特徴があります。上記は医療用の処方せん医薬品を例に挙げましたが、中には市販で購入できる成分も増えてきています。

NSAIDsは「プロスタグランジン(PG)の合成を阻害すること」で消炎鎮痛効果を発揮します。

PGは発痛増強物質・炎症誘発物質でありますが、その種類は様々で胃の粘膜を保護する役割や、血小板を凝集させて出血を止めたり、出産の際の子宮収縮をする働きがあったり、体の中での働きは多岐にわたります。

 

痛みを誘発する様な何らかの刺激を受けると、その際にシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素がアラキドン酸という脂肪酸に作用することでPGが合成されます。PGは痛みを感じる閾値を下げることで痛みを感じやすくさせます。つまり、弱い刺激でも痛みとして感じやすくさせる働きがあります。

そのCOXの働きを邪魔するものがNSAIDsと呼ばれる種類の消炎鎮痛剤です。

 

ちなみに「痛み止めは胃に負担がかかる」と耳にしたことがあるでしょうか?PGは胃を保護する働きもあるため、そのPGの合成を阻害するNSAIDsは胃に負担がかかるのです。実際に「胃・十二指腸潰瘍」の患者さんには使用禁忌となっています。

最近ではセレコキシブやメロキシカムなど、従来のNSAIDsよりも胃のPG合成を邪魔する作用が弱く、胃に負担のかかりにくいものも発売されています。(だからといって負担が全くないわけではありません)

 

 

 

 

 

では、先述した痛みの中で、その「原因」による分類ではどこの痛みに効果的でしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

それは「侵害受容性疼痛」です。

 

 

侵害受容性疼痛は炎症による痛みなので、NSAIDsは炎症・痛みの原因物質であるPGの産生を抑えることで消炎鎮痛効果を発揮します。

従って、炎症が原因ではない「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」には効果が得られにくく、また別のアプローチが必要となります。坐骨神経痛などで痺れるような痛みがあるといったケースでは、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤が効きにくく、自己判断で痛み止めを続けていても全然変化がないといった方もおられます。

 

「痛み」=ロキソニン!という使い方をされている方がいらっしゃいます。

その考え方、時には危険です。

場合によっては効果が見られないばかりか、その状態を悪化させてしまうケースもあります。

 

 

今回は第一弾として「痛み」というものの種類と「NSAIDs」について紹介しました。

 

次回はNSAIDsでは効きにくい「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」のことNSAIDsの使用が推奨できない場合痛みに使われる様々な薬について紹介させて頂きます