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2018.08.10

発熱時に熱は下げるべきなのか?

こんにちは。ウィンゲートトレーニングセンター、ボディケア事業部の岡田です。

前回は風邪についての話をさせて頂きましたが、どんな時に風邪っぽいなと感じますか?鼻水が出る・喉が痛いなどの症状や、何だか熱っぽいという時に「風邪かな」と思うことが多いのではないでしょうか?

では、「熱が出る」という状態はどの様な意味を持つのでしょう。熱が出たら下げた方が良いのか、発熱ということに対してどの様に考えればよいのか、今回はそんなことについて紹介します。

 

 

熱が出るということ




体温が上がる原因にはウイルスや細菌の「感染」による発熱する場合と、「熱中症」のように体温調節がうまくいかずに体内に熱がこもってしまう場合とがあります。

 

感染による発熱


ウイルスや細菌は「外因性発熱物質」とされています。

ウイルスや細菌が体内に侵入すると、体内の免疫系統が応答し、白血球やマクロファージといった細胞がウイルスと対峙します。侵入者との戦いが始まると、サイトカインという物質が作られます。

サイトカインも発熱作用があり、「内因性発熱物質」としてインターロイキンやインターフェロン、TNF(腫瘍壊死因子)などが知られています。

これらサイトカインが発熱をもたらす経路は次の通りです。

 

①サイトカインがPGE2の産生を促す


※サイトカインは血液脳関門(何でもかんでも脳に物質が移行しないようにする関門)を通れないため、


PGE2を利用して脳に情報を伝える。



②PGE2が視床下部に作用



③視床下部の体温調節中枢が体温を上げる指令を出す



④皮膚血管の収縮・汗腺閉鎖→熱放散を抑制、筋肉のふるえ→熱産生の促進


 

「体温のセットポイントを上げる」という言い方をする場合もあります。普段セットされている体温よりも高いラインにすることで、そこまで体温を上げるように体が反応するのです。

 

 

熱中症


連日の猛暑が続く中、今年は熱中症のニュースが大変多く流れています。時に命の危険にもさらされる熱中症ですが、体の中はどの様な状態になっているのでしょうか?

ヒトは皮膚の温度を上げることや汗をかくことで体の中の熱を外へ逃がすことで体温調節を行っています。しかし、猛烈な暑さや脱水状態、激しい運動などによりうまく熱を逃がすことができなくなり、体温が上昇することで「熱中症」と呼ばれる状態になってしまいます。

症状としては、

・めまい、顔のほてり、体温上昇

・筋肉のけいれん(こむら返りの症状)

・吐き気

・汗がふきでるor汗が出なくなる

・まっすぐ歩けない

等の症状が現れます。

 

 

 

 

熱は下げた方が良いのか?




体温を下げた方が良いかどうか、これは「感染」「熱中症」とで変わってきます。


感染による発熱の場合


体温が上がるということはちゃんと意味があります。

①ウイルスや細菌の繁殖が抑えられる。特にウイルスは低温の方が繁殖力が高いため、発熱することでそれを抑制出来ます。

②白血球の動きが活発になる

③免疫機能が高まる

 

この様なことが確認されています。従って、感染により発熱することは生体にとって有利な方向に働くのです。熱が出ているということは、身体が侵入者と闘っている証拠です。

少し熱が出たからといってすぐに解熱剤を使うことはお勧めしません。確かに熱が下がると身体は楽になりますが、感染している状態をマスクしてしまう可能性があります。

ただ、40℃を超える様な高熱や、仕事や勉強などでどうしても熱を下げたい場合など、必要な時は薬を使って解熱することは良いでしょう。また、乳幼児の場合にはそこまで高い熱ではなくても、ぐったりしていたり水分を摂ってくれないという状態の場合には解熱剤を使用してあげる必要が出てくる場合もあります。

 


熱中症の場合


これは早急に体温を下げる必要があります。熱中症はPGE2が関わる発熱ではないため、解熱剤の効果はありません

応急処置としては、

・涼しい場所へ移動

・衣服を脱がし、身体を冷やす

・水分と塩分の補給

そして、すぐに医療機関を受診しましょう。時には救急車を呼ぶことも必要です。

また、首や足の付け根、脇の下などの太い血管が通る場所を冷やすと良いです。少し前に、この方法ではあまり体温が下がらないという報告が話題になりましたが、熱中症の応急処置・予防対策としては是非行うようにしましょう。

 

 

解熱剤の使い方




解熱剤はNSAIDsやアセトアミノフェンを使用します。PGE2が関わっているためNSAIDsを使用することで解熱することができますが、副作用を考慮するとまずはアセトアミノフェンを使用することが勧められます。

また、インフルエンザの場合は使用する解熱剤はアセトアミノフェンが第一選択です。「ライ症候群」と呼ばれる脳症を引き起こす可能性があるためです。基本的に他のNSAIDsは使わない様にしましょう。

解熱剤にも、飲み薬や坐薬といった剤型のものがあります。特にお子様の場合は薬を飲むこと自体を嫌がりますし、熱が出て辛い時は尚更飲んでくれません。そんな時は坐薬を使うと良いでしょう。

 

 

体温が上がった状態の時は、その原因が「感染」なのか「熱中症」なのかで対処方法が異なります。そして「熱があるから解熱剤」ではありません。早急に体温を下げる必要もあれば、時には様子を見る必要もあるのです。

むやみやたらに、熱が出たらすぐに薬という方向へ向かわない様にして頂ければと思います。