
2018.09.28

風邪をひいたら「葛根湯」は正しい?

こんにちは。
ウィンゲートトレーニングセンター、ボディケア事業部の岡田英之です。
薬局でもそれ以外の場所でも、漢方薬を利用している方が最近増えてきています。「生薬は自然のものなので安心」「西洋薬は強いから抵抗がある」といった声を耳にすることがあります。
また最近では、西洋薬では対処が出来ないような状態の際に漢方薬を使うことで症状が改善するという報告も増えてきており、世界的に漢方薬の効果について注目がされてきています。

皆さんが良く耳にする漢方薬といえば「葛根湯」ではないでしょうか?市販でも売られていて、栄養ドリンクの様に液体で服用できるものも販売されています。
「風邪の初期には葛根湯」というフレーズはどこか頭の中に残っているのではないでしょうか?この「初期」というのが実はとても大事なのです。
漢方薬の考え方に「証」というものがあります。(これは東洋医学での考え方にもあるものです。)「証」というのは、簡単に言えば今患者の全身状態がどの様になっているかを表すものです。
漢方薬はこの「証」の状態に合わせて使い分けがされます。つまり、鼻水が出るから鼻炎薬、咳が出るから咳止めという、「症状→薬」を選ぶというものではなく、「証→その全身状態を改善する漢方薬」という選び方をします。
では、代表的な漢方薬である「葛根湯」について見てみましょう。使用説明書にはこのように書かれています。
<効能効果>
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん
<証>
比較的体力のある人で、炎症性あるいは疼痛性疾患の初期、あるいは慢性疾患の急性増悪期に用いる。
1)感冒などの熱性疾患では、初期で悪寒・発熱・頭痛・項背部のこわばりなどがあって、自然発汗を伴わない場合。
2)疼痛性疾患では局所の疼痛、腫脹、発赤などを訴える場合
3)患部が発赤、腫脹、強い掻痒感を伴う場合
難しい単語も出てきていますが、要するに風邪の場合は「まだ体力の残っている風邪のひき始めで寒気や熱がある人に使いましょう」ということです。
そして、実に様々な症状に対して使用できることがわかるでしょう。西洋薬では咳止めは咳、鼻炎薬は鼻水といったように「コレといえばコレ!」という使い方になります。これも非常にわかりやすく使いやすいですが、漢方薬は患者の全身状態に対して使用をするため、同じ漢方薬を使っている人でも、それぞれ悩んでいる「症状」が異なる場合もあるのです。
これは漢方では「同病異治」(同じ病気でも治療が異なる)、「異病同治」(異なる病気でも同じ治療をする)という考え方になります。

「証」に応じて漢方薬を選択すると上述しましたが、風邪に対しても様々なものを選択できます。
葛根湯については触れましたが、他にも使用されるものがあります。
・「普段から丈夫で体力のある人で自然発汗がない」・・・麻黄湯
・「体力が落ちている人の風邪の初期」・・・・麻黄附子細辛湯(特に冷えがあり、そんなに高熱とならない人向け)
・「体力のない人が鼻水が出る場合の風邪の初期」・・・小青竜湯
・「体力が衰えた時の風邪の初期」・・・桂枝湯
では、急性期を過ぎた後、つまり風邪が長引いている時に使うものは次のものがあります。
・「急性期を経てなお頭痛・悪寒などのある場合」・・・柴胡桂枝湯
・「胃腸虚弱ですでに数日を経て長引いている場合」・・・参蘇飲
・「回復期に熱が長引いたり、解熱後咳が出て痰が多く不眠の場合」・・・竹じょ温胆湯
体力がある時を「実証」、体力が低下した状態を「虚証」として考えます。また、自然に汗が出ているかどうかもポイントです。風邪をひいて数日過ぎた時は体力が落ちてきているため「虚証」の方向に向かっています。
そのため、「実証」で使用する葛根湯などは使用しない方が良いのです。
もし「虚証」の人に「実証」で使うものを用いると・・・・さらに体力を低下させて状態を悪化させてしまう可能性があります。葛根湯や麻黄湯は体を温めて発汗させる方向に向かいます。自然発汗がある「虚証」の人に使うと・・・・どうでしょうか?
「風邪の初期には葛根湯」は間違いではありませんが、さらに一歩踏み込んで「風邪の初期で自然発汗がなく体力がある場合」に葛根湯を利用するとより効果的です。
市販で買える漢方薬も、パッケージの裏に「証」が記載されています。是非お手に取った際はご覧いただき、今の自分の状態に一番合ったものを選んでみて下さい。

漢方薬といえども「薬」ですので副作用はあります。また、西洋薬の中には生薬から抽出した成分もあります。例えば、マオウやハンゲに含まれるエフェドリンです。エフェドリンは交感神経を刺激する作用があるため、循環器系に問題がある方や排尿障害のある方、甲状腺機能亢進がある方は注意が必要です。
また、小柴胡湯は肝炎の治療薬であるインターフェロンを使用している方には、間質性肺炎が現れることがあるため使用禁忌となっています。
必ず使用上の注意は確認して使いましょう。
そして・・・・以前もご紹介しましたが、アスリートは漢方薬を使わない様に!
禁止物質であるエフェドリンを含有する葛根湯や麻黄湯、小青竜湯はもちろんですが、それ以外の漢方薬もグレーゾーンに入ります。体調に困った時には受診するか、スポーツファーマシストに使用が出来る薬を相談しましょう!!
スポーツの世界で使用が禁止されているものとは?
スポーツと薬~スポーツファーマシストの存在~
ウィンゲートトレーニングセンター、ボディケア事業部の岡田英之です。
薬局でもそれ以外の場所でも、漢方薬を利用している方が最近増えてきています。「生薬は自然のものなので安心」「西洋薬は強いから抵抗がある」といった声を耳にすることがあります。
また最近では、西洋薬では対処が出来ないような状態の際に漢方薬を使うことで症状が改善するという報告も増えてきており、世界的に漢方薬の効果について注目がされてきています。
漢方薬の考え方

皆さんが良く耳にする漢方薬といえば「葛根湯」ではないでしょうか?市販でも売られていて、栄養ドリンクの様に液体で服用できるものも販売されています。
「風邪の初期には葛根湯」というフレーズはどこか頭の中に残っているのではないでしょうか?この「初期」というのが実はとても大事なのです。
漢方薬の考え方に「証」というものがあります。(これは東洋医学での考え方にもあるものです。)「証」というのは、簡単に言えば今患者の全身状態がどの様になっているかを表すものです。
漢方薬はこの「証」の状態に合わせて使い分けがされます。つまり、鼻水が出るから鼻炎薬、咳が出るから咳止めという、「症状→薬」を選ぶというものではなく、「証→その全身状態を改善する漢方薬」という選び方をします。
「葛根湯」について
では、代表的な漢方薬である「葛根湯」について見てみましょう。使用説明書にはこのように書かれています。
<効能効果>
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん
<証>
比較的体力のある人で、炎症性あるいは疼痛性疾患の初期、あるいは慢性疾患の急性増悪期に用いる。
1)感冒などの熱性疾患では、初期で悪寒・発熱・頭痛・項背部のこわばりなどがあって、自然発汗を伴わない場合。
2)疼痛性疾患では局所の疼痛、腫脹、発赤などを訴える場合
3)患部が発赤、腫脹、強い掻痒感を伴う場合
難しい単語も出てきていますが、要するに風邪の場合は「まだ体力の残っている風邪のひき始めで寒気や熱がある人に使いましょう」ということです。
そして、実に様々な症状に対して使用できることがわかるでしょう。西洋薬では咳止めは咳、鼻炎薬は鼻水といったように「コレといえばコレ!」という使い方になります。これも非常にわかりやすく使いやすいですが、漢方薬は患者の全身状態に対して使用をするため、同じ漢方薬を使っている人でも、それぞれ悩んでいる「症状」が異なる場合もあるのです。
これは漢方では「同病異治」(同じ病気でも治療が異なる)、「異病同治」(異なる病気でも同じ治療をする)という考え方になります。
風邪に使える漢方薬は?

「証」に応じて漢方薬を選択すると上述しましたが、風邪に対しても様々なものを選択できます。
葛根湯については触れましたが、他にも使用されるものがあります。
・「普段から丈夫で体力のある人で自然発汗がない」・・・麻黄湯
・「体力が落ちている人の風邪の初期」・・・・麻黄附子細辛湯(特に冷えがあり、そんなに高熱とならない人向け)
・「体力のない人が鼻水が出る場合の風邪の初期」・・・小青竜湯
・「体力が衰えた時の風邪の初期」・・・桂枝湯
では、急性期を過ぎた後、つまり風邪が長引いている時に使うものは次のものがあります。
・「急性期を経てなお頭痛・悪寒などのある場合」・・・柴胡桂枝湯
・「胃腸虚弱ですでに数日を経て長引いている場合」・・・参蘇飲
・「回復期に熱が長引いたり、解熱後咳が出て痰が多く不眠の場合」・・・竹じょ温胆湯
体力がある時を「実証」、体力が低下した状態を「虚証」として考えます。また、自然に汗が出ているかどうかもポイントです。風邪をひいて数日過ぎた時は体力が落ちてきているため「虚証」の方向に向かっています。
そのため、「実証」で使用する葛根湯などは使用しない方が良いのです。
もし「虚証」の人に「実証」で使うものを用いると・・・・さらに体力を低下させて状態を悪化させてしまう可能性があります。葛根湯や麻黄湯は体を温めて発汗させる方向に向かいます。自然発汗がある「虚証」の人に使うと・・・・どうでしょうか?
「風邪の初期には葛根湯」は間違いではありませんが、さらに一歩踏み込んで「風邪の初期で自然発汗がなく体力がある場合」に葛根湯を利用するとより効果的です。
市販で買える漢方薬も、パッケージの裏に「証」が記載されています。是非お手に取った際はご覧いただき、今の自分の状態に一番合ったものを選んでみて下さい。
1つだけご注意を・・・

漢方薬といえども「薬」ですので副作用はあります。また、西洋薬の中には生薬から抽出した成分もあります。例えば、マオウやハンゲに含まれるエフェドリンです。エフェドリンは交感神経を刺激する作用があるため、循環器系に問題がある方や排尿障害のある方、甲状腺機能亢進がある方は注意が必要です。
また、小柴胡湯は肝炎の治療薬であるインターフェロンを使用している方には、間質性肺炎が現れることがあるため使用禁忌となっています。
必ず使用上の注意は確認して使いましょう。
そして・・・・以前もご紹介しましたが、アスリートは漢方薬を使わない様に!
禁止物質であるエフェドリンを含有する葛根湯や麻黄湯、小青竜湯はもちろんですが、それ以外の漢方薬もグレーゾーンに入ります。体調に困った時には受診するか、スポーツファーマシストに使用が出来る薬を相談しましょう!!
スポーツの世界で使用が禁止されているものとは?
スポーツと薬~スポーツファーマシストの存在~